World Guide to Beer Modern Times hoppy citrusy wheat

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第87回 【技術革新4】

チェスター・フロイド・カールソンは最終的には大成することとなるが、それに至るまでの経緯は非常に険しい道のりであった。元々、物理研究者であったカールソンではあるのだが、研究所では主に特許部門で仕事をしていた。ところが世界恐慌の影響でクビになると、次の職探しは難航をした。ようやくニューヨークで特許の分析者として雇われると、次第に頭角を現し始め、どんどんと出世を重ねて管理職となった。それは、つまるところ毎日、膨大な特許申請を処理する日々であり、とてつもない激務だった。流石に優秀なカールソンでも特許書類をしっかりと確認・手作業で複写する職務の連続に、関節炎を患った。体は関節炎で痛いのに、毎日彼の机には膨大な審査書類が積み上げられ、どうしようもなくなってしまったのだ。「なにかズルは出来ないものだろうか?」彼は物理学の知識がある、前職は研究所だ。色々と考えていくうちに、電子写真術を考案した。これは現代のコピー機である。コピー機のカメラ部分から排出される静電気をドラムに帯電させる方法を思いついたカールソンは、これをドラムから紙に転写する機械構築を成功させる。このアイデアで特許を取るのは簡単だった、何ていったって前職は特許会社なのだから。次の命題は、コピー機を販売する事だったが、この計画は実に16年にも及ぶ挫折の連続であった。どこに行っても追い返され、馬鹿にされると、そのうち意気消沈をしていった。しかし、諦めない。最後の最後で必ず立ち直るカールソンは、ついにハロルド社によって見いだされることとなる。これが後のゼロックスである。カールソンの発明は、世界経済に大きな変革を起こし、多くの複写機が特許申請を行う人を救っている。もちろん特許申請とは関係ない人々も救っている。

ある意味、最もモダンな発明と言えるコピー機であるが、hoppy citrusy wheatは現代のビールと言えるだろうか。今回はウィート( 小麦) ビールなので、あまり近代的(?)ではないと予想されるが・・・

飲んでみよう。
なにこれ?なんだこれ?南国のパッションフルーツとホップを大量にぶち込んだ味である。しかし、麦の甘みを上手に生かしており、マンゴー的な甘みと喧嘩することなくミックスされているのである。まるでジュースのような感覚ではあるが、最後の最後にビールらしさが立ち上げってくるため、不思議なのである。苦さは少なく、味は程よい甘さに抑えてある。それでいて味は薄くないのだから、最終調整はばっちり決まっている。本当に、なんだこれは、と言ってしまう不思議さに溢れ還っている。思わず微笑んでしまった。

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飲んでみれば解る不思議さ

次回『技術革新5』

World Guide to Beer Modern Times red rye

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第86回 【技術革新3】

石油から様々な製品が作られるが、中でも繊維製品の開発を熱心に行っていたのがデュポン社だった。後にナイロンの開発で有名になり、次々と合成樹脂や合成繊維で大儲けをした巨大企業である。この分野では世界最大の企業であり、新製品の開発も巨額だ。ステファニー・クウォレクは優秀な科学者であったものの、女性差別のために社内では疎まれる存在だった。彼女はポリアミドを研究中に偶然にも『いつもと違う失敗作』を造った。奇妙な液体に関心を持った彼女は、それを上司に報告をしたが無視された。また報告をしたが無視された、また報告を・・・クウォレクの熱心な説得に根負けした上司は、その奇妙な液体の研究を許した。すると、これまでにはない奇妙さが次々と発見されていったのだ。この奇妙な液体から作られた繊維は、異常なほど頑丈で、調べてみると鋼鉄の5倍も強靭なことが判明したのである。クウォレクはこの研究を続けて、特許を取得した。その特許はデュポンが買い取り、それ相応の昇進・給料を彼女は手にすることとなった。それ以降、製品化された特殊繊維はケブラーと呼ばれている。ケブラー繊維は、曲がりにくかったため通常の繊維製品に用いられることはまずない。またケブラーは特性上、強い力が加わると、その衝撃で延びる。これらの特性は防弾チョッキにうってつけだった。しかし、肝心の軍隊はケブラーにあまり関心を抱かなかった。銃弾を止める繊維に疑問があったらしく、ケブラー防弾チョッキの採用は見送られた。ところが、ベトナム戦争が終わると、すぐにケブラー繊維の重要性に気が付き、打って変わって膨大な予算が投入されることとなった。それまでの防弾チョッキは金属板を用いた古式のモノであったが、ケブラーなら大幅に軽量化することが可能だ。また鋼鉄以上の強度を持つケーブルが開発可能となったことによる恩恵はとても大きい。特に建築関係ではケブラー繊維が必要不可欠で大活躍をしている。

女性科学者クウォレクが赤色が好きだったかどうかは不明だが、情熱研究家という事で赤色ビールを紹介する。今回はIPAに属するジャンルであるため、味はかなりきつそうだ。

飲んでみよう。
IPAらしくホップが強いため、飲めない人も出てくるラインだ。柑橘系の、特にグレープフルーツのような香りが鼻を刺激し、飲みごたえがある。とにかくホップ味を全面に押し出している。ライ麦らしさは少しあるのだが、それよりホップの方が強く、どこまで行ってもIPAの直線をひた走る。ある意味、予想通りな味なのだが、強烈にきついというわけではなく、どこか優しい。奇妙さはないのだが、堅実に強い土台を感じるビールだった。

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強いビールが好きな方にお勧めです。

次回『技術革新4』

World Guide to Beer Modern Times coffee roasty stout

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第85回 【技術革新2】

ダイナマイト発明者であるアルフレッド・ノーベルの功績は広く世に知られているが、兄リュドビック・ノーベルの発明に関してはさほど知られてはいないだろう。彼は親が運営していた銃工場を受け継いだのだが、長兄ロベルトが偶然にも銃に使用する木材を探索中に石油を発見、それを機にアゼルバイジャンに石油会社を設立した。後にノーベル兄弟石油会社はロシアの油田開発で成功すると、リュドビックは石油に関する研究施設を設けて、弟アルフレッドさながらの研究に没頭するようになった。彼を悩ましていたのは、掘り当てた石油をいかにして遠方に届けるのかという事である。まず陸路ではパイプラインを改良することに努めたが、そのうち海上輸送する方法が最も良いと考えるようになり、石油輸送専用の巨大船を設計しはじめた。石油を海上輸送する - 言うのは簡単だが、この時代では問題が多かった。石油を樽に入れて船に積む方法は、漏れる危険性が極めて高く、火災の懸念もあった。そこで彼が考案したのは、石油専用の貨物室を設ける内部設計だった。そして積載する石油を機関室から遠ざける事も忘れていない。また石油と気温の関係についても十分に研究をしていたリュドビックは、貨物室を換気できる機構を備え付けた。第一号ゾロアスター号は世界初のタンカーとして商業的に成功をすると、他の会社も真似た。リュドビックのタンカー改良は留まることを知らず、石油貯蔵エリアを細分化して、石油が船体の片側に偏らないような工夫も取り入れられた。そうすることで巨大な船体を安定させることが可能となり、転覆の危険性も減った。リュドビックの野望は深く、次々と野心的な石油開発を行っていった。ロシアの石油製品の4割はノーベルが実権を握り、タンカーの成功で世界経済をも握る名門となった。しかし、その成功はバクー・コミューンによる軍事的手段によって強引に国有化されると、ノーベル兄弟石油会社は消えることとなった。

真っ黒なモダンタイムスは、私の愛してやまないスタウトである。やはり黒いビールは美味いと相場が決まっている、しかもこの深き深淵は、とても見た目が宜しい。

飲んでみよう。
評価が難しい黒ビールである。というのも飲み始めにインペリアル・スタウトさが感じられるのだが、インペリアルらしくないアルコール度数5.8%に我に返る。名前が示すとおりにコーヒー味であり、それも隠していない味わいなのだ。通常、コーヒー・スタウトは、どこまでローストしたかにより味に反映されるのだが、これは結構、ローストしている感がある。少しウーロン茶のような苦さがあるが、かなり微小であり、コーヒー+ブラックチョコレート+ウーロン茶という変質的な苦さを感じる。そのため黒ビールの中でも味わいは相当に複雑なタイプに分類され、久しぶりに黒ビールで驚く事となった。風味に工夫が凝らされている印象だが、凝り過ぎていると捉えられるだろう。ギミック多き黒ビールだが、品質的には上級であり、玄人向けのビールに仕上がっている。

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飲むとお腹一杯になります。正に石油的なビールだ。

次回『技術革新3』

World Guide to Beer Modern Times bright rustic saison

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第84回 【技術革新1】

フランスは困っていた。
巨大な帝国は世界の中心として君臨はしていたものの、18世紀半ばから英国と長期的な戦争に突入をしたからだ。オーストリア継承戦争、七年戦争、フランス革命戦争、そしてナポレオン戦争と休む間もなく戦争をした結果、兵站問題が目立ち始めた。拡大する戦線に対して、戦闘で死亡する兵士と餓死した兵士の割合が逆転をしたからだ。戦争に負けるわけにはいかなかったフランスは、新たな食料保存法を発見した者に1万2000フランの賞金を与えると発表した。この問題に取り組んだニコラ・アペールは、人類史に残る伝説の料理人として名を残すこととなった。彼は、ある程度調理した食料を瓶に入れ、コルク栓と封蝋で密閉したのである。彼の親はワイン職人であり、ワインが空気に触れると質が低下することを知っていたため、それを料理に応用したのである。アペールの保存食量はフランス軍でテストされ、記録によれば4か月間も海上輸送された試供品は、問題がなかったとされている。その上、アペールはプロの料理人だ、味も軍用ビスケットとは比べ物にならないほど美味だったらしい。世界初の缶詰はガラス製であったが、これを横目で見ていたのが敵国である。なるほど、フランスは保存食量を大幅に向上させた。イングランドのピューター・デュランは割れやすいガラス製ではなく、ブリキ版から成る入れ物に食料を保存した。これが現代の缶詰のスタンダードとなった。フランスとイギリスの缶詰の味勝負では、恐らくフランスに軍配が上がっただろうが、輸送の面ではイギリス製が圧倒的であった。後に缶詰はアルミニウム製に代わり、戦場以外の場面でも大いに活躍をするようになった。この発明は一般的にアペールの功績と見なされており、彼は生涯に渡り缶詰食料の味の研究をし続けたという。

ビール名がModern Timesという事で、近代に発明された品物を紹介いたしました。同ビールはシリーズ化していますので、この論調は後4回続きます。よろしくね。Modern Timesは2013年に醸造を開始した新しい醸造所であるが、ビール好きの間では噂になっている実力派だ。ネットのビール評価Ratebeerでは好意的な意見も多く、私も飲むのが楽しみだ。今回は、bright rustic saisonという銘柄になり、スタンダードな位置づけになっている。

飲んでみよう。
平均的なビール・テイストと予想していたが、良い意味で裏切られた。まず、やや乾燥した味わいであり、後味はかなり軽い。ベルジャンスタイルということだが、確かに草原らしさもある。しかし、何かが主張して「俺強いだろう?褒めて褒めて」というウザさが全くない。清楚なビールと呼べる品であり、かなり新鮮味があった。金属製のビール缶だが、この銘柄に関してはアペール考案のガラス製で売られていても全く違和感がない。これでは簡単に英国は真似が出来ないだろう。

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スタートラインにぴったりなビール

次回『技術革新2』

World Guide to Beer ケンタッキー・バーボン・バレル・エール

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第83回 【黄昏あかね空】

アメリカを代表する産業は2つしかない、つまりジェット戦闘機とバーボンだけだ。この2つだけがアメリカが世界に誇る製品なのである。他の製品、例えば窓と林檎は、日本製が一番だ。窓はそこら辺で買えるし、林檎は青森で買うのが宜しい。どちらもフリーズしないし、電力を消費しない上に戸惑うことないだろう。車?ああ、この分野の一番はアメリカでも日本でもない。答えは英国だ。私の友人にMG-Bを所有しているオーナーが言っていたから間違いないよ。「いやー、流石はブリティッシュ・レイランド製、たまに動かなくなるけど全く壊れていないから驚きだね」(※ブリティッシュ・レイランドは低品質な車を生産することで有名だった)日本車もアメ車も動作しない事とは壊れたという事なのだが、英国車では意味が違うらしい。よって車は英国製に限る。麻薬は伝統産業かもしれないが、新しい大統領が良く分からないことを言っているので、どうなるのか解らない。カルフォルニアでは嗜好品OKという扱いになったばかりなので、これから盛り上がるだろう。ちなみに麻薬取締局を設立し、麻薬撲滅に強行的な態度を示したニクソンはカルフォルニア州出身である、なんとも運命的である。そうやって都合の良い選別をしていくと、バーボンくらいしか残らない。

世にも珍しいバーボン・エールである。
バーボン熟成に使われたオーク樽によって6週間近く熟成されたビールであり、アルコール度数も8%以上と高めだ。強いアメリカというイメージ通りのバーボンだが、こちらも負けず劣らずのパワフルさを兼ね揃えている。Alltech Lexington Brewing And Distillingという醸造メーカーなのだが、国内で入手するのはネット通販からが手っ取り早い。店頭で見かけることはないだろう。

飲んでみよう。
凄い香りである。ビールじゃない、完全にバーボンだ。色もオカシイ、茜色全開のバーボンさを一切に隠していない。ビールじゃない、バーボンだ。車じゃない戦車だ。完全にアメリカ、あまりに堂々としたビールじゃないビールだ。
味もバーボンだ、そうとしか言いようがない。ワイルドターキーとフォアローゼズを配合させて炭酸入れました的な飲み物である。つまり非常に飲みにくい美味しさでグラス重量を満たしているのである。重く、濃く、反省しない酒。それがバーボン・エールなのだ。

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超・人を選ぶビール。アメリカ全力の風味でございます。

次回『技術革新1』
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