雑記

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アイギス「まだまだ元気です」

Wheatley「 I'll never break.」


壊れない機械は存在をしない。
それは心を持つロボットやマヌケAIですら逃れることの出来ない運命であり、いつかは『その日』を迎えるのである。
私のPCが見事にぶっ壊れた2月、いつかは来るとは思っていたが、受け入れることは出来ない現実でもあった。
原因は電源であり、それに伴いマザーボートがショック死した、PC故障の原因としてはありふれた例だ。
これはいかにPCが複雑な噛み合わせで動いていても、物理的な問題を防ぐことは難しく、そしていとも簡単に壊れてしまうという当たり前の事柄。
ハァと大きくため息をつくと、自身が高校生だった時代をゆっくりと思い出していた。



田舎生まれの特権の1つは、いくら大音量でBad Religionを流そうが文句を言われないことだ。
そのCDコンポは物心ついた時から自室に置いてあり、聞くところによれば遠い親戚の友人の友人がくれたシロモノらしい。
大変に大きく、少なくともサイズは平均的な中学生男児の胴体くらいはある、見た目はCDコンポと言うよりもジュークボックス寄りであった。このコンポがどこのメーカー製か最後まで解らなかったのは、明らかに個人製作された形跡があったからである。中学生の私ですら一発で個人製作されたカスタム機であると解った位に、オリジナル色が強いオーディオ機器だったのである。
コイツで大方のロックは聞いたし、それで音楽を楽しんでいた。
誰も入り込めない私だけの時間、空間。最高の思い出だ。



音質は頗る良かったが、各種ボタン類に遊びがあり、反応はイマイチ。
幾つかの点で気に入らなかったため、中学生になると内部を改造し始めることになった。
このジュークボックス似の機械は、CDが3枚入るターンテーブルが特色のあるデザインで、後に私を悩ませることになるトラブルの多くはコレに集中をしていた。
特にターンテーブル下の構造が異様に入り組んでいて、完全に『技術者の道楽』がぎっしりと詰め込まれていたために、1つの不具合を直すのに3時間を要することはザラにあった。
しかし、実に美しいアイデアで成り立った構造で、ターンテーブルに不必要に大きな穴が設けられており、上から除くとそこから内部構造がハッキリと目視できた。
つまり、こいつを作った最高に馬鹿げた道楽者は、『内部構造を自慢したい』ためだけに、パーツの位置に気を配り、組み立てたことになる。
今思い出しても、狂気まみれのセンスである。



高校2年生の夏、ついに運命の日が来てしまった。
だいぶ前から不調で、自身で出来る手術は何度も施したが、最後の最後に道楽者のセンス穴に手を入れないと修理できないレベルまで到達をしてしまった。
この不必要な空間に手をつけると言うことは、固有のメリットを壊すことと同義であったため、悩んだのである。
町の修理屋や機械に詳しい大人が観ても、誰もが「こんなの無理だよ、分けがわからん」と頼りない返事をするだけだったし、製作者にコンタクトを取ろうとしたが、結局無駄に終わってしまった。
最後にマトモな音楽を流したのは、The OffspringのCan't Repeatだったため、今でも笑える。
修理人を探している過程で、ある道楽者と出会うことになった。

「このコンポは壊れているし、修理できる人間は製作者だけだと思いますけど…」

「いや、そんなことはどうでも良いんだよボウズ。私はコイツの見た目が気に入ったんだ」

男はアンティーク収集を趣味にしており、このポンコツに5万円を出すと言ってきた。
高校生にとって5万円は美味しい小遣いだったし、当時だと欲しいモノが多かっただけにタイミングとしても最高だった。
交渉は最終的に8万円まで値が上がり、そして決裂をした。

「お前みたいなモノの価値がわからない子供が世の中をダメにするんだ!!」

最後の最後で悪態をついた道楽者の申し出を断ったのは、単に人柄が気に入らなかっただけ。
そもそもコレは見世物にするために製造された機械じゃない、音楽提供できなくなったら破棄するのが宿命だ。
それは数年にも及ぶ修理をした私が一番に解っていた。
何なら8万円で、解体ショーを見学するかい?道楽者さん。



拝金主義者が聞いたら、私を罵るだろう。
何だってガラクタを8万円で売れるチャンスを捨てたのだから、非難されても当然だ。
しかし、今の私は高校生だった頃の自身を褒めることが出来る、アレは実に正しい決断だった、と。
その後、私は理学に進むことになったし、そこで本当に多くの定理や計算を学べたことは8万円以上の価値があった。
あの日、仮に売ってしまったら『何ともいえない後悔』が残ったに違いない。
壊れないモノなんて存在をしない。
例え思い入れがあったとしても、丁寧に修理をしたとしても、その日は来るのである。



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