World Guide to Whisky 山崎12年

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               これまで と これからの選択

【午後のPCゲーム:ビールコラム特別企画 スペシャル・ウイスキー】

昔々あるところに…といっても1万3千年前まで遡る、遠い遠い過去の話である。我々の祖先がまだ狩猟生活者として生きながらえていた時代。彼らは時として長い旅路に駆り出されることがあった。移動先に豊富な獲物がいれば、しばらくは安泰な生活が期待できるが、それが長くないことも明白であった。獲物を求めて長い距離を移動する生活は、突如として終わりを迎える。自分たちで食糧を生産するという行為は、人類史に残る偉大な一歩である。この耕作により、1人の人間で何人分もの食糧を生産することが可能となり、また食料の長期的な保存もできるようになった。農業を大規模に行うためには、組織化が必要であり、細々とした集団は巨大な集団となり、いつしか国家と呼ばれるようになった。そこで明確な富が定義されると共に、財産を守るために、或いは他国から奪うために、戦争が起きるようになった。作物こそが、文化の礎であり、成長剤ともなった。恐らく、最初の耕作はメソポタミア地方だったと言われている。

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今回は序文が長いです、ごめんなさい。

昔々あるところに…あまりにも昔だが、少なくとも先ほどよりは時代が進んだ地球のどこか。私が物語を作るとしたら、このように書く。
『ある巨大な国家は、近くの小国を力で屈服させると、さらに巨大な領土を手に入れた。彼らは農作を大規模に推し進めると共に、貯蔵の重要性も十分に理解をしていたので、沢山の穀物倉庫を建設した。ところが貯蔵庫の見張り役が、不真面目であったためにトラブルが絶えなかったのだ。仕事中にサボるのは当たり前、時として大麦の入った大壷を倉庫に入れずに放置する事さえあった。しかし、ある時、彼は自分のミスを隠す必要に迫られた。そう、数ヶ月前に倉庫に入れるのが面倒で外に置いた大麦入りの大壷…今度のミスが発覚すれば間違いなく彼はクビだ。急いで壷を見つけて中身を捨てようとした瞬間、壷中の液体に興味が沸いた。壷の中は大麦と雨水が混ざり合い、とんでもない状態になっていたが、甘い香りが彼の鼻を刺激した。なんだろう、この水は?…暫くして巨大国家は摩訶不思議な飲み物を販売し始めた。』
最初の文明、シュメール文明では既にビールを生産しており、しかもこの時点で国民的な飲み物であった。よって、ビールの生産方法が確立されていたのである。その後、バビロニアやアッシリア、エジプトでも同様にビールは生産された。
もう少し時代が進んだヨーロッパでは、新たな勢力が登場する。ワインである。大麦と葡萄の2派に分かれたヨーロッパであったが、これは気候の差が大きい。大麦生産がしやすかったベルギー、チェコ、英国ではビールが発達しやすかったし、ギリシャ、イタリア、フランスでは葡萄の栽培に力を入れたためにワイン国家となった。しかし、まだ蒸留酒は表舞台に出てこない。アルコール度数を引き上げるには、あるテクニックが必要だったのである。

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ウイスキーの登場には長い時間が必要だった

昔々あるところに・・・地中海東岸に(現シリアに近い)フェニキアという国家があった。全盛期は地中海全域に影響力を持つほどの力があり、こと商売に関しては天才的なセンスがある民族である。これより昔に、『混合物を一度蒸発させ、後で再び凝縮させることで、沸点の異なる成分を分離・濃縮する行為』は既に知られてはいたが、フェニキア人たちは大変に上手に使いこなしていた。古代の人たちにとって、一度蒸発した液体が、再び元も姿に戻る蒸留は、まるで魔法のように思えたに違いない。その魔法を日常的に、かつ高度に、そして商売に活かしていたフェニキア人たちには驚かされる。まず彼らは、蒸留により海水から真水を得ることを知った。これは不純物を意図的に取り除く事の重要性を、何か他のことに使えないだろうかという欲求から発達していくことになる。例えば、医学への応用だと、薬の濃度を高めることにより強力な製品へと生まれ変わり、また香水をより華やかなものへと変化させることも易々とやってのけた。商売上手なフェニキア人たちは、あっと言う間に潤い、更なる富のために蒸留を行い続けたのである…勿論、アルコールもリストに入っていた。フェニキア人たちがどこまでアルコール蒸留に通じていたかは解らないものの、今までの結果から考えるに、上手い事やっていたのだろう。そして、その蒸留法をテキスト化して商売しようと考えたのかもしれない。一説によれば、フェニキア人の教えは、地中海を中心に、スペインを経由して西ヨーロッパ、そしてスコットランドへと波及したのだという。

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蒸留法を教えてやろう

昔々のスコットランド…『コノ、教科書ヲ買エバ金持サ!!』という怪しげな商人から買ったかもしれない。タイトルは『猫でも簡単にわかるフェニキア流の蒸留法』、きっとボッタクリ価格だったはずだ - をまじまじと読み込んだスコットランド人たちは、ぶちキレ寸前だった。なんだよ、この教科書は?意味の分からない単語で一杯だし、そもそも地中海の連中が何をしようと俺らは関係ないじゃないか!!クーリングオフ制度がなかったので、スコットランド人は返品できず、途方に暮れていた。まぁ、とりあえずアルコール飲料を造ってみるかぁ…というノリだったのかもしれない。後に巨大な利益を生むことになるスコッチではあるが、この背景には彼らの長きに渡る経験・知恵と地形的な優位さが合わさった結果でもある。まず、この地域では大麦派であったこと、しかも非常に良質な大麦の生産地として知られたいた。どうやら、スコットランド人は大麦の栽培を昔から得意としていたらしく、その評判は他国にまで届いていたほどだ。さらに水も良かった。ベネ・ネヴァス山には6ヶ月以上も雪が残り、それらが溶けて多くの地域に水を与えた。無数に分かれた川に、良質な雪解け水。水の量も申し分ない。一般的には詳しく語ることがないが、ウイスキー生産には安定した水の量が必須条件となる。仕込み水から洗浄水まで、とにかくウイスキーには大量の水が必要となるのだ。実は、この条件に合致する地域は、あまり多くはないので、その分も含めてスコットランドは他国よりも優位に立てた。さらに、海藻という追加武器もある。ウイスキーに海藻?と思うかもしれないが、これはユニークな味付けをするさいに重要な要素となりえる。例えば、薬品に近い味で有名なラフロイグだとかは、スコッチのもうひとつの顔でもあり、他を寄せ付けないものがある。

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スコッチはウイスキーの頂点に君臨した

昔々から現在に至るまで…スコッチウイスキー、アイリッシュウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキーそしてジャパニーズウイスキーを総称して5大ウイスキーと呼ぶ。
アイリッシュはピートを使用しないために、スモーキーフレーバーがなく飲みやすさは抜群だ。アメリカンはバーボンやテネシーなどの独特な色合い、カナディアンは軽快な風味が特徴だ、ジャパニーズ・・さぁ、ようやく本題に入ることが出来ます。いやー今回は本当に長い序文でした!!じゃあ話を本格的に始めますが・・・ ・・・
・・・ (文章量が膨大によりカットしました) ・・・ 
2014年、英ウイスキーガイドブック「ワールド・ウイスキー・バイブル2015」において、山崎シングルモルト・シェリーカスク2013が世界最高のウイスキーに初めて選出された。これは長いこと強大な位置に居たスコッチを押しのけての快挙となる。この発表に海外は驚き、様々な意見がネット上を飛び交った。「日本のウイスキーレベルは近年、非常に高いから当然の結果だろう」という意見から、「米でも食ってろ」だの「日本ウイスキーはネットで購入できるか」だの「日本でウイスキーを製造していたことを始めて知った」だの。盛り上がっている日本ウイスキーだが、さらに国内では連続テレビ小説「マッサン」が大人気の影響もあり、ありとあらゆる店から有名な銘柄が売り切れてしまった。私の行き付けの酒屋も、びっくりするほど売れ行きが良く、私に販売する分の山崎がないというのだから。全く困ったんだ。幸運にも山崎12年を入手(本当は飲むのを忘れていただけ)したので、紹介をしようと思う。私が選ぶ日本代表のウイスキーは山崎だ、だからどうしてもコイツが必要だったのである。



ストレートで飲んでみよう。
琥珀を溶かしたのだろうか?その色は実に健康的なウイスキーそのもの。やや明るいのが山崎の特徴だ。
香りはジンジャーのようで、やや草っぽさも入り混じった大地のようである。あのスコッチ、マッカランと比べると平均的かもしれない。だが、味は一級クラスだ。この山崎12年は、相当にドライな味付けであるが、長い長い余韻、まるで満月の夜の3時間のような感覚が得られる。日本のウイスキーはピートが少ないのが普通だが、山崎は確かなスモークが遅れてやってくるので、私は大好きなタイプだ。舌に撃ち込まれた感覚もあるが、血液の中に入り込んでくるかのような、染み込んでくる様子もしっかりあり、鼻から出るアルコール香りも十分だ。良い酒だ。断トツではないが、格別に素晴らしい。
またこれは余談だが、山崎12年はストレートで飲むことをおススメする。とにかく、こんなに美味いストレートは久しぶりだ。

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私はマッカランを愛するが故に、山崎を持ち上げることは出来ない。許して欲しい、私にとってのマッカランは何時までも世界一で居て欲しい酒なのだ。そして、日本が世界一になったとはいえ、いずれスコッチが引き摺り下ろしに掛かるのも解っている。彼らと我々とでは、あまりにもウイスキーに掛けた時間が違いすぎる、向こうは数世紀、こっちは100年くらいの歴史差がある。でも、これから美味しいウイスキーを飲もうとする人々は幸せだ。何だって選択肢が2つしかない。スコッチかジャパニーズか。日本製は少しお高いものの、世界一に輝いた品質だ。それくらい目を瞑れるでしょ?

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No title

大した差ではないだろうけども、アイルランドのほうが先にウィスキーを作り始めたんです。ウチのご先祖様の知り合いが遺言代わりに書いた自伝でアイルランドの古い地主から聞いたと書いてますから本当です。アイルランドからアイラ島を経てスコットランド各地に伝わったのじゃ。自分は海藻スペシャルことアイラ・モルトは薬だと思って飲んでます。

Re: No title

> 大した差ではないだろうけども、アイルランドのほうが先にウィスキーを作り始めたんです。ウチのご先祖様の知り合いが遺言代わりに書いた自伝でアイルランドの古い地主から聞いたと書いてますから本当です。アイルランドからアイラ島を経てスコットランド各地に伝わったのじゃ。自分は海藻スペシャルことアイラ・モルトは薬だと思って飲んでます。

文章の構成上、アイルランド経由の部分は抜かしてしまいました。混乱を招いてしまい申し訳ありません。
(言い訳をすると、今回のコラムはあまりに長文化したために、掲載に当たってスリム化をしました。なので詳しい方が読まれると、色々と言葉が足りない箇所があります)
私はアイラ島にある蒸溜所では、ボウモアとアードベッグが好きですね。特にボウモアは15年ダーケストが記憶に残っています。
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