The Stanley Parable レビュー

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発売 2013年
プラットフォーム PC
開発 Galactic Cafe

我々、プレイヤーはゲームを選ぶことが出来る。仮に貴方がゲーム雑誌のライターで無い限りは、或いは広告で金銭を得ようとしなければ、商品を自らの手で選び取り、そしてプレイするかどうかの選択をする事が出来る。当たり前だ、金銭を支払うのは消費者なのだから、ゲーム会社は『自分たちを気に入ってもらえるように』アピールをする。このゲームの開発費は数百億円が投入されただの、2007年から開発しているだの、有名デザイナーが参加している、など等のアピールを馬鹿らしいほど行う。良い印象を持ってもらわなければ、消費者は靡かないから懇切丁寧に。でもWould you kindlyでお願いされる筋合いは無いよ。ここは海底都市じゃないんだ。良くあるオフィスの一室で、一人の男がゲーム開発者に立ち向かう壮大な旅が始まる!!・・・なんじゃ、そら!?

【概要はよく読むこと、いいね】
Galactic Cafe開発の一人称視点アドベンチャーゲームで、大変にゲーム内容が異質なため話題になったタイトルである。元々はHalf-Life2のModからスタートしており、そこから幾つかの要素を加えてリリースされた経緯がある。後述するが、このゲームの問題は、過去に例を見ない自虐セルフパロディだらけの構成に加え、ゲームをプレイする事への本質的な疑問をプレイヤーに投げかけていることにある。ゲーム内に於いてプレイヤーが何かを選択する事への言及をしたタイトルとしてはBioshockがあるが、これはストーリー上の分岐点として描かれるに留まっている。ところが、The Stanley Parableはそれ自体がテーマとなっており、かつゲーム進行を司る語り手が登場をする点で、相当に変わっているタイプのゲームと言える。ゲーム内で出来ることは、一部のイベントを除けば移動だけであり、敵との戦闘などのアクションは殆ど無いと考えてよい。プレイの大部分は語り手がプレイヤーの選択した行動に対する評価や感想を垂れ流しているだけであり、純粋なアクションを楽しみというよりかは、語り手の反応を見て笑う色が相当に強い。現時点で日本語版は販売しておらず、ゲーム内容から言っても英語を聞く力がそれなりに必要。恐らく、ゲーム内容の異質さから考えても、日本の代理店が絡んだり、パッケージ版が発売される可能性は低い。

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誰も居なくなったオフィスを探索するというのが目的だ

【Stanleyは正しい選択を行いました(私に従え)】
プレイヤーが操作するのはオフィスに取り残されてしまったエンジニアであるStanleyで、彼を無人オフィスから脱出させることが当初の目的となっている。Stanleyが喋ることは無く、何かしらの性格付けやキャラクター性は持っていない。これが重要な要素で、プレイヤー自身がStanleyという意味がある。更に重要なのは、Stanleyをゴールまで導いてくれるナビゲーターがいることだ。このナビゲーターに関しては一切に素性が解らず、特に名前は決まっていない模様(ここでは語り手とする)。主にゲーム進行は、何かの選択が用意されている→Stanleyが選ぶ→語り手が評価や感想を言う、流れになっている。これを繰り返していき、複数用意されているEDに到達していく事となる。選択は非常に多く、右ドアか左ドアかという簡単なルート選択から、中にはバグを用いた通常のゲームでは考えられないようなルートも存在している。1つのEDに到達する平均時間は約10分程度だが、これも例外が多すぎるので何ともいえない。初回プレイでは、多くのプレイヤーは10分程度でEDを迎えられる程度くらいに考えておこう。

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選べ

【左ドアに入りました】
右ドアと左ドアの選択をしなければならないシーンが作中にある。が、ここで注目すべきは語り部のセリフで『he entered the door on his left』(彼は左ドアへ入った)、つまりプレイヤーが選ぶ前から勝手に行動を決めていることに在る。事実、正規ルートは左であり、語り手が用意したベストEDの最初の一歩は左ルートから始まる。仮に右ルートに入ると、語り手は「Stanleyは間違えました」程度のコメントだが、何回も正規ルートを外すと次第に怒り始め、本性が現れてくるようになる。このゲームの面白さは、正に語り手を怒らせることにある。と言うのは、語り手は最初のうちは紳士的な態度で接してくれるのだが、間違いを連続する度に口調が悪くなっていく。更に正規ルートから外れていくと、悲観的なったり、プレイヤーに対して文句非難を浴びせたり、と感情豊かに怒ってくれるのである。この語り部を困らせる方法は、かなり多く、むしろ正規ルート以外の間違ったプレイを探すことが醍醐味である。個人的に面白かったのは、プレイヤーが物置倉庫に何回も入ると見せるリアクションで、これは語り手が可哀想になってくるほどの行動である。その結末は自身の目で見て欲しいが、私がこのEDを始めてみた時は大笑いしてしまった。「お前もかよ!!」と的確なツッコミを入れる語り手もセンスがある。

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五月蝿い!!私は好きなようにプレイをするのだ

【Stanley、君は私を怒らせたいのか】
この語り手は、実に興味深い行動を起こしてくれる。この語り手がゲーム開発者の代弁をしていることは明白であり、その一端はプレイヤーの行動に対して、強行的に行われることが多々ある。語り手の目的は、プレイヤーをベストEDに導くことであり、それ以外の行動を取ったプレイヤーには制裁を加えることを良しとしている節がある。さらに付け加えると、語り手はゲームの大部分を掌握しているので、プレイヤーが間違った行動をしても何かしらの対応方法を持ち合わせているのである。例えば、あるエリアでは正しいパスコードを入力しないと先へ進めないシーンがある。ここで語り手は正解のパスワードを丁寧に教えてくれるのだが、プレイヤーがそのコードを入力せずに間違ったパスを入れ続けると痺れを切らして勝手に先へ進めるような段取りをしてしまうのである。これはまだ平和な強硬手段で、時にはプレイヤーの自由を奪う等の、快適性を奪うような事もしてくる。この表面的な紳士口調と、腹黒さを両立させたキャラクター性は大変に評価が出来る。ブラックジョークやメタ発言も多く、解る人には壷にはまるセリフも、他ゲームでは見られない特殊性がある。その一方で、正規ルートを忘れるといった初歩的なミスを犯すこともあり、完璧主義者になりきれていないお茶目さも可愛らしい。

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悪役に徹した語り手はノリノリです

【おい、そっちへ行くな】
全EDの自力到達は非常に難しいレベルである。というのも、幾つかのEDへ進むルート分岐に、ゲーム内のバグ、グリッチを用いたものがあり、これを自力で見つけるのは間違いなく強運が必要。実を言うと、私が自力で到達できたEDは11個ほどで、あとのEDは動画で確認をしたというのが実情である。バグを用いたEDは気づく人はいるのだろうが、チートを用いて見るEDは、そもそも普通のプレイヤーはそこまで考えないというのが率直な感想である。そのため1つや2つのEDを見るのは簡単だが、全ルートED到達は極めて難しいレベルであり、そういった意味ではハードコアといっても良い。さて、複数のEDが用意されているゲームであるが、以下に記述するのが私の好きなED一例である

一部のEDネタバレがあるため注意

・・・

最初は、Museum Endingである。ここでは語り手よりも上位クラスである開発者による解説が行われ、最終的にゲームを中断する事でクリアが出来ることが明かされる。このルートに到達する過程でもESCAPEと書かれた道なりに行くことになるので、一見すると語り手の支配から脱出できたようにも見える。しかし、ゲームクリアが、ポーズメニューから行うというのは、ブラックジョークすぎて本当に開発者がこれを伝えたかったか疑問が残る。ただし、真剣に考えると、プレイヤーがゲームを止めた時点でクリアと言うのは何となくだが解る気もする。

第二はLaunch Pod Ending。このEDではドアの開閉を利用して語り手を部屋に閉じ込めるバグを用いることになる。どうやら語り手はゲーム内の全てのセクションにアクセスできる権限が無いらしく、完全に部屋に閉じ込められ、以降のプレイヤーに干渉できなくなる。道を戻ると、ロケットが用意されており脱出する。その後、ゲームを語る者がいなくなるのでStanleyのその後は解らなくなる。完全に語り手をやっつけたという意味では、プレイヤーの目的を達している。しかし、考えようによっては誰かがロケットへの道を用意し、そのためのバグも修正しなかったわけである。語り手より上位の存在の手の中で躍らされただけかもしれない。

第三はReal Person Ending。数あるEDの中でもゲーム進行とプレイヤーの存在について強く言及がなされており、私の中でも納得が出来る内容であった。つまるところ、いくら語り手が懇切丁寧にプレイヤーを導こうが、邪魔をしてこようが、プレイヤーの入力がなくなってしまった以上、どうすることも出来ないのである。毎回、毎回に間違った選択をして困らせていたプレイヤーが突如として動かなくなった。語り手は考える - どうしたんだ?ははぁーん、そうやってまた私を困らせる気だろう?いいかい、私に立ち向かうなんて無駄なことは止め給え。さぁ、早く右ドアか左ドアに入るか選びなさい。 … … … しかしプレイヤーは何時まで経っても動かない。ゲームを中断するわけでもなく、そのまま動かなくなってしまったプレイヤーに次第に語り手も慌て始める。ここに来るまでの過程が重要で、その直前に完全に怒ってしまった語り手(あまりにもプレイヤーが無能すぎるため)は、ついにプレイヤーに対し激しい非難を始める。ところが、プレイヤーにとっては、その非難自体が理不尽である。そしてプレイヤーはついにStanleyの操作する権限を奪われる。ゲームにはプレイヤーの操作介入がなくなった主人公が1人、語り手は何とかしようとするが、プレイヤーを追い出したのは自分である。

所謂、開発者がプレイヤーを思うがままに出来ると信じ込み、自分たちのエンターテイメントを押し付けたために、誰もプレイする人が居なくなってしまったというBADEndである。(というか、開発者自身がプレイヤーを追い出した)
このEDはやけに印象深く、そして想像を絶する終わり方である。ある意味、一番やってはいけないゲームの終幕かも知れない。

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操作入力の無くなった主人公を永遠と待つはめになってしまった

【どうして無能なプレイヤーしかいないんだ】
大切なことだが、ゲームを遊ぶ上での主役はプレイヤーである。我々が入力をしなければ、展開は訪れない。しかし、このゲームではStanleyが喋れないため、ほぼ語り手が主役級の活躍をする。ゲーム開発者が、プレイヤーの行動に対して説教を繰り返し、時にゲーム進行の妨害を行うような強硬手段に出るとすれば、プレイヤーは従わざるを得ない。開発者が望んでいるのは、バグを見つけて楽しむような輩でもなければ、間違った遊び方をするようなプレイヤーではないと伝えてくる。しかし、The Stanley Parableでは、そういった開発者たちに、『プレイヤーの選択(例えそれが変であっても)を尊重しろ』と訴えている。一部のEDでは、あまりにもプレイヤーが暴れすぎたためにゲーム自体が崩壊してしまうシーンもあったが、そこまでするプレイヤーは現実にはまず居ない。開発とプレイヤーの溝はある一定の距離が必ずあると思うが、あまりにも酷い場合だと、課金システムでプレイヤーを縛ったり、ゲーム品質を根本から勘違いして、売れない責任を消費者のせいにする会社もある。そういった問題提起を、ブラックジョークで塗りたくった本作品の存在意義は非常に高いと感じるが、やはり人を選びすぎている
ゲームは、例えばドリフトでライバルを抜き去ったり、或いは敵キャラを銃で倒す、仲間を増やすといった、欲求を叶えてこそエンターテイメントなのである。そこからエンターテイメントとは何か?と哲学的に示されても、余計な迷惑である。このゲームのレビューが難しいのは、本質的にThe Stanley Parableが楽しさを追求するよりも、楽しさ、選択する事で得られる価値の存在について明らかにしようと努めてしまったことにある。キワモノゲーム好きなら大喜びだが、普通のゲームがしたい人にとっては説教臭くて仕方が無い

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違うゲームが始まっているんですけど

【私を評価しなさい】
あまりにも常軌を逸したゲームデザインであり、ゲーム上級者向けすぎる。ゲームプレイの殆どが語り手のセリフを聞くことであり、そこに楽しみを見出せないと厳しいタイトルである。だたし、語り手のリアクションやセリフは見ていても楽しく、間違ったルートを見つけるのも楽しいことは事実。過去に類似するゲームも無く、世界で唯一つのオンリーワンなゲームである事も確かである。ED総数も多く、1プレイが短くとも総量で考えるのであれば十分な水準といえる。私としてはオリジナリティ溢れるゲームは高く評価をしたい。また、テーマとしてもプレイヤーvs開発者という爆笑もののセンスであり、他会社も易々と真似が出来そうもない。そういうことで、キワモノゲームではあるが、かなり大甘な評価をしてしまったことを許していただきたい。


99点 … … … こんなレビューで満足ですかね、語り手さん。

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