World Guide to Beer フォスターズラガー

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第97回『そしてヘミングウェイ』

ノーベル文学賞の受賞者は大凡"アンチ"は少ないものだが、アーネスト・ヘミングウェイは例外的に批判されたアメリカ人作家だった。彼の作品は - 例えば『誰がために鐘は鳴る』のように、男性をストイックに、古典的に、そして戦争に巻き込まれていく様相を描いたことでも理解されているように、実に漢なのだ。典型的な漢を描いたヘミングウェイは批判された。しかし、この作品に限らず重要な事は、ヘミングウェイ自身がスペイン内戦に参加した経歴の持ち主であり、そして射撃の名手だった。彼の理想はマッチョな男性であり、それこそがヒーローだったのは戦場での体験によるところが大きい。多くの批評家にとってヘミングウェイを攻撃するには好都合過ぎる条件だった。いかにも文学者らしくない、粗暴で、髭もじゃで、銃を愛し、戦争にも行った野蛮な漢・・・そして狩猟を愛するアメリカ人に、凄まじい批判が集まった。だが彼はアメリカ文学最高傑作の1つに数えられる作品『老人と海』を発表すると、専門家は黙るしかなかった。彼の集大成、狩り・戦い・人生の最期・そしてやり場のない絶望。正にヘミングェイの糧であった全てが凝縮された文章は、ありとあらゆる文化に波及をし、その2年後にノーベル文学賞を受賞した。しかし、後年は健康状態の悪化が続き、鬱病だったという。アメリカ最高の文豪と名高い漢は、愛用していた猟銃で自身の人生を閉じた。
The world is a fine place and worth the fighting for.
(この世界は素晴らしいぜ。戦う価値があるからな)

彼は作品内でそう言っている。

オーストラリア国内にて生産されているフォスターズラガーは、世界的にも有名なラガービールだ。ところが同国では、あまり人気が無いというか、さしあたり大人気な商品という訳ではないようだ。理由は良く解らないが、生産国では人気が無く、海外で知名度が高い銘柄と言う位置づけらしい。日本では入手しやすい銘柄なので、嬉しい限りであるが。

飲んでみよう。
うん・・・うん・・・うん。分かる、分かる。そういう感じのラガービールである。変な事を言うが、何処か日本のラガービールに似ている印象で、喉越し重視のスッキリタイプである。うん・・・つまり・・・私は嫌いな味・・・とハッキリと言えないのがブログの辛いトコロだ。実は、若い頃にオーストラリア旅行をして、かなり人生観が変わった経験がある。オーストラリアは暑く、無駄にデカく、ハエは多いが、ワニとカンガルーが美味しく食べれる国である。そういう国で飲むとしたら、すっきり。メチャクチャ冷えたラガーが良いに決まっている。つまるところ、フォスターズラガーは日本で飲むと美味しいとは言えない味であるが、生産国で飲むなら賢い選択になるだろう。そういうビールってあるでしょ?ほうら、私が批評をすると、素晴らしい世界になるじゃないか。戦う価値は無いけれど。

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ヘミングウェイが山小屋で猟銃片手に飲んでそう。

次回『世界一予約が取れないレストラン』

World Guide to Beer ブルームーン

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第96回『南部へようこそ』

ノーベル文学賞の受賞スピーチ。
栄誉ある場で演説を行ったアメリカ人作家ウィリアム・フォークナーは、その内容から伝説的な受賞者となった。ストックホルムの壇上からフォークナーは聴衆に向かって話し始めた・・・?・・・・?・・・???。待て、待て、フォークナー殿。それは何語なんだ?会場のノーベル財団が慌て始め対応を検討する。フォークナーの英語は凄まじい南部訛りであり、会場にいた殆どの人間は、その内容を聞き取れなかったという。後日、その内容を精査した文章が新聞に掲載をされると、その政治的な内容、及び精神は一級の文学者に相応しいスピーチの代表となり、後世に伝えられるまでとなった。フォークナーの作品は、その殆どが南部・ミシシッピ州を舞台にしたものであり、自身の人生も同州に捧げた生粋の南部人である。その作風は難解であり、特に時系列の考え方が順序に従っていない部分もあるため解り難い作品も多い。しかし、文学的な手法を巧みに取り入れた文章は、フォークナーの得意とするところでもあり、ミシシッピ愛に溢れた古典的アメリカ人という印象である。実は、アメリカ人でノーベル文学賞を受賞した作家スタインベックも、フォークナーと似た部分がある。ただし、此方は西部カリフォルニア州に対する深い愛で覆われている。アメリカ人にとって、フォークナーよりもスタインベックの方が人気なのは、彼のテーマが労働と貧困という現代でも通用をする題材であり、かつ教科書に掲載しやすい鉄板人物であることが大きい。日本で言えば、夏目漱石と言ったところかもしれない。何方の作品もアメリカ文学を知る上では必修ではあるが、何方かと言えばスタインベックを勧める人の方が多い。

ブルームーンを製造している醸造所は西部コロラド州。クラフトビールとしては非常に高い知名度を誇り、元々は野球観戦者のために販売をしていたことがキッカケで大ヒットした。まぁ、アメリカ人の野球熱は国家的なものなので、それに関連した商品は多い。このビールも野球出のビールなのだ。

飲んでみよう。
まずブルームーンはオレンジを添えて飲むのが正式なのだが、生憎、オレンジが無くてね。このまま飲ませて頂く。ベルジャンホワイトなので、オレンジピールやコリアンダーの風味は感じられる。意外にスパイシーな飲み口であり、オレンジっぽさは後味に響くタイプである。こう言っては何だが、ベルジャンホワイト系の中では特にカクテルのような味わいであり、非常にフルーティな南国っぽさがある。よって気温30度以上の状況では、ブルームーンは大変に美味しく感じるだろう。子供っぽさも無いビールなので、幅広い層にウケが良さそうだ。アメリカのベルギースタイルだが悪くないビールである。

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優れたビールではあるが、飲みやすさには注意が必要だ。

次回『そしてヘミングウェイ』

World Guide to Beer カイザードーム ダークラガー

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第95回『デカい』

缶1000mlである。アホみたいにデカい。あまりに巨大サイズ過ぎて写真に収まりきらない。大は小を兼ねない、大きくて良いことなど何もないのだよ。例えば、車はサイズの大きさが使い易さに直結する。つい先日も、軽食を買いに路地裏近道をしてコンビニに行こうとしたら、小道でベントレー・コンチネンタルが立ち往生をしていた。こんな近隣住民しか知らないような抜け道を、あろうことか大型車で抜けようとして詰まったらしい。困った事にバックでも戻ることが出来ないような状況で、本当にどうしようもない状況だった。勿論、私は見捨てた。助ける義理なんて無いし、そもそも私は自分に利益にならない手助けはしない主義だ。可哀そうにベントレー、明らかに側面をこすって傷をつけていた。あれ、修理費高くつくぞ。これがアメリカのような国であったら話は真逆になるだろう。大きくないとダメという風潮は日本よりもアメリカなどで見受けられる。特に表面化するのは食事量だ。体のサイズもあるのだろうが、兎に角、アメリカ人は大食いだ。そして拍車をかけるのが食料品の安さである。どの食品が安いというわけでは無く、全体的に安価な傾向にある。米シンクタンク・ランド研究所の発表によれば、米国人の食費は1930年当時は可処分所得の4分の1だったが、現在は約10分の1まで低下していると報告をしている。だから一杯に食べても日本より食費が安く済むわけだ。これが肥満率の高さに起因する要因の1つに挙げられているのも何だか納得できてしまう。時代の流れでアメリカを含め、食事が小型化すれば、それは多くの文化に波及すると思う。文化の象徴である食事がミニマムになるわけだから、その影響は大きいはずだ。そうなればベントレーも小型化するかもしれない。いや、小型化したベントレーは見たくないので、大きいままで良い。ベントレーは大きくてナンボ、そしてカイザードームもいっぱいに飲んでナンボだ。

ドイツビールは久しく紹介をしていなかったが、1リットル缶カイザードームの黒を用意しました。カイザードームそのものは、いたって普通のドイツビールなので、酒店に行けば容易に入手できると思います。

飲んでみよう。
うん、普通の黒だな。これ・・・あの言い難いのだけれども・・・ギネスビールのようなスタウトタイプに比べると、ドイツ黒は気怠い味だ。ドイツビール好きには申し訳ないが、ドイツの黒ビールは大した銘柄が無い。一部の例外はあるが、ドイツの黒は大人しく、飲みやすい味わいで落ち着いてしまった感がある。不味いとは思わない、しかしスタウトに慣れている方程、口に合わないタイプの黒ビールである。爆発力が無い、苦さの中に焙煎さが無い、総じて破壊力が無い。ザ・平和主義の黒ビールである。逆にスタウトみたいな苦さに耐えられない方は、好感が持てる優しさだ。シュヴァルツらしさを求めるのなら外せない逸品。

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いつもよりも小さく見えてしまう萃香さん

次回『南部へようこそ』

World Guide to Beer モアネット・ブロンド

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第94回『モア・モアネット』

私の飲酒スケジュールは一週間でビール二本(二銘柄)という制約があるため、一般的な日本人男性の平均飲酒量を大きく下回る。(意外でしたか?)医者に止められているだとか、経済的な理由と言うわけではないのだが、いつの間にか固定化されたルールとなった。1週間で2銘柄を飲むスケジュールのため、毎回に次回予告が出来るわけだ。(ただしスコッチは別腹だ)さて、ビールは当たり外れがあるように、外れを引いたときの衝撃は大きい。それは一週間分の労働やら家事、自分自身全てを否定されたかのような失望さえ感じる。それを防ぐためには、毎回に『お気に入り』の銘柄だけチョイスをすれば良いのだが、それでは新しい発見はないし、何より面白くない。だから2週続けて同じ銘柄を飲む事は滅多にない。航空母艦にはこれ以上の戦闘機は詰めないのだ、既に保存庫は溢れに溢れ、補給なしでも問題ない位だ。勿論、幾つかはリザーブがある。ただ、その殆どはスタウトやインペリアル等のマッシブな連中で、黄金色の居場所はあまり多くない。温度管理などの維持費も馬鹿にならないから、出来る事ならお気に入りだけで満席にしたい。その点、モアネットは自身がリストラされないことをよく知っている。恐らく、私以外のコレクター達もモアネットを解体しないはずだ。なぜなら、ベルギー・ワロン地方を代表する味わいはモアネットが一番に解りやすく、時にとても飲みたくなる衝動に駆られることがあるからだ。私はベルギービールも大好きだが、マレッツ、デュベル、ロシュフォール10、そしてモアネットはリストラできない。

ベルギー南部エノー州にあるデュポン醸造所を代表する銘柄である。
この醸造所はベルギービールには欠かせないものとなっており、素晴らしい銘柄が多い。世界的にはセゾンビールが有名だ。1996年ワールドビアチャンピオンシップエール部門にてゴールドメダルを取得したのが今回紹介するモアネット・ブロンドである。その高い実力とは裏腹に生産量が少ないらしく、日本国内での流通量は非常に少ないと言われている。ネット通販での購入をお勧めします。

飲んでみよう。
8.5%という高アルコール度でフルボディ。綺麗な小麦色とは異なったマッシブな飲み物である。特色すべきは甘みと酸味のバランスで、甘さはフルーツ的な優しい味、酸味も何処かフルーツ的だ。最初の飲み口は正にフルーツだが、徐々にフルボディらしい強さが響いてくる。意外にも苦味は自己主張するタイプで、3つの味わいが楽しめるバランスも持ち合わせている。ただし、全体的に味が濃く、アルコールも十分あるため一気に飲むことは出来ない。ゆっくりと長夜に楽しむビールだ。

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トップクラスのベルギービール。相当に破壊力がある。

次回『デカい』

World Guide to Beer 鬼の居ぬ間にIPA

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第93回『鬼が居てもIPA』

今は昔、京の近くに酒呑童子なる妖怪が居座っておりました。
日の本の国で最大級の勢力を誇った鬼の総大将であります。その力たるや類を見ないがために、討伐は大変に困難でした。事態を重く見られた藤原道長は、国内の名だたる武人6名を集わせると、酒呑童子の討伐を命ぜられたのです。その筆頭は渡辺綱、剛勇で知られた武人であります。一行は、鬼退治のために旅をする途中で、様々な人物から酒呑童子の噂を耳にしていきます。どうやら酒呑童子は唯の悪鬼妖怪として考えるには甘く、妖怪の四天王、近づいて刀一振りで退治できるモノノ怪ではなさそうだ。そうして渡辺綱たちは旅の途中で不思議な旅人と出会います。その旅人は酒呑童子の詳細を教えると去っていきました。渡辺綱は旅人の忠告をよく聞くと、山伏(修行者)の格好をして童子の城内に入り込みました。童子を前に構えると、渡辺綱たちは酒を進呈し鬼の注意を散らし言います。「これは都で評判の酒です。これで一晩の宿泊をさせてください。」童子はその願いを了承すると、毒入りの酒とは知らずに飲んでしまいました。暫くは無事でしたが、何しろ強力な毒でしたので、もうどうすることも出来ません。渡辺綱は童子が痺れて動けなくなったのを確かめると、童子の首を切り落としました。鬼最大の実力者が亡き者になったことで、渡辺綱は他国の鬼から命を狙われることとなりました。その刺客の中に酒呑童子の部下、茨木童子なる鬼がおり、渡辺綱を襲撃します。しかし、剣豪・渡辺綱に腕を切り落とされると、鬼達はより一層、恐れるようになりました。茨木童子は切り落とされた腕を取り戻すも、もはや復讐する気力は無く、以降も『渡辺』なる者には近寄らず。節分の日に渡辺姓は豆を撒かずとも鬼達に恐れられるようになったと聞いております。

最強の妖怪候補の1体、酒呑童子は萃香さんの元ネタのようです。
残念ながら私は渡辺さんではないので、萃香さんから恐れられてはおりませんが、今回は数々の品評会で名を聞く醸造所、伊勢角屋麦酒です。前々から気にはなっていた銘柄で、ようやく飲むことが出来ます。鬼の居ぬ間にIPA・・・鬼がいるけど飲む事にしましょう。

飲んでみよう。
色を見てほしい、何て美しいのだろうか。IPAらしさもあるが、まるで紅葉の中に迷い込んだかのような無邪気さが溢れている。IPAは強力なマグナム弾のようなジャンルだが、意外な事に本銘柄は強烈な苦味をウリにしていない。やや拍子抜けしたものの、独特のフルーツ味と段々と効いてくる苦味で体が傾いてくる。恐らく、一口飲んで直ぐに『美味しい』とは言えない類のビールで、何口か含んでようやく正体を現すタイプと言える。私も数々のIPAを飲んできたが、これは徹底的にバランスを重視したタイプで、非常に飲みやすいながらもユニークでフルーツなコクが強く出ている。私好みの味わいであり、名前負けしない素晴らしいビールである。

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節分でも、そうでなくても素晴らしい銘柄だ。本当に美味しい。

次回『モア・モアネット』
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