
1990年頃、PCゲーム用のVRヘッドギアが発売された。知る人ぞ知る初期VRデバイス"
Forte VFX1 Headgear"は、90年特有の期待と技術が組み合わさった失敗品の1つに数えられている。バーチャルリアリティという概念自体は昔からあったのだが、一般的に認知され始めたのは80年以降であり、90年代は仮想現実がメディアに取り上げ始めた時期である。特にSF小説"ニューロマンサー"は仮想現実とアンダーグラウンドパンクな千葉(?)について描き、これに触発された後継作品は数多い。問題となったのは、この時代に夢見られたサイバーパンクを実行するために必要なマシンが存在しなかったことである。VFX1 Headgearは時代を先取りしすぎたデバイスであり、それが暴かれると仮想現実は見捨てられた。その後も似たような製品やアイデアは細々と登場はしたが、相変わらず馬鹿げた大きさのヘッドギアが必要だったり、十分な需要が無かったり等があり、あまり大きな関心は持たれなかったように思える。

Dying LightをVRでプレイしたら面白そう
2016年あたりからPCゲーム界隈ではVR対応のタイトルで話題が持ちきりだ。2016年10月に米国で行われたゲーム・カンファレンス:Steam Dev Days 2016においてValveはVRについてかなり真剣に考えていることが伺える。VRに関する熱心な発表や新製品の投入など、PCゲーム大手Valveは研究に余念がない。家庭用ゲームにもPlayStation VRなどが注目を集めているのを眺めると、2017年は更に普及することが予想される。現在の問題は、VRヘッドギアの大きさ・重量問題と価格帯だが、この2つは早期に解決されるだろう。日進月歩のハードデバイステクノロジーを舐めてはいけない。それこそグーグルグラスのような薄くて軽いデバイスは既に登場をしている。これはVRというよりかは拡張現実(Augmented Reality)向けと考えるべきだろうが、これをVRヘッドギアに応用しないというのは考え難い。"いずれ"という注釈は入るだろうが、楽観的に見るべきだろう。価格に関しても、今は試験期間というか、ようやく出始めた時期なので仕方がない。スマートフォンの出始め時期もそうだったように、"いずれ"行き渡るだけの価格になるだろう。

VRゲームで遊ぶ人は、傍から見ると奇妙なプレイに見える
VRの分野でゲームが先行をしているのは間違いないのだが、これから先はスマートフォン用VRに注力されていくのではないか。正確に言えば、スマホ・ベースのVRヘッドギアが登場するはずである。これは最初期はエンターテイメント用かもしれないが、そのうち拡張現実用のヘッドセットに置き換わる。もしかするとヘッドセットではなく、サングラスのような不自然さの感じないデバイスかもしれない。そうなれば、スマホは現在と異なった意味合いを持つようになる。ARサングラスに映し出される地図アプリケーションは、貴方の行き先を正確にナビゲートするからスマホを操作する必要性は無くなる。VRが重要な娯楽デバイスとなるのであれば、ARは産業用に活用され、現実の手助けをする。とは言え、今の段階ではARはやや頓挫気味だ。グーグルグラスはプライバシーの観点から中止となり、法整備の問題もあるだろう。

正にVR向けな要素満点のCall of Juarez: Gunslinger ただしVR化はされていない
話は脱線するが、ARの問題で気になるのが公平性である。
VRとは極端に言えば、インターネットに接続せずとも成立する。しかしARは現実を補助しなければならない以上、最新の情報が必要になるはずだ。医療用のARグラスに映し出される手術方法が10年前の情報であってはならない。最新の医療技術を考慮した正しいモノでなければ導入する意味が無い。よってARが抱える問題は、サービスを提供する側に公共性があるかどうかにある。例えば、私のような人間がAR関連企業のボスだったら・・・「ああ、このユーザーは午後のPCゲームのアンチだね、じゃあ早速BANしよう。これはルールだからね。規約にもそう書いておいたよ。何度も言うけど、これはルールなんだ、だからARから出て行ってもらう」サービス提供側が気に入らないユーザーを締め出す可能性はゼロではない。そもそも、ARグラスを装着した瞬間に、大量の電子公告が目に入ってくるようなウザさがあるかもしれない。仕事用のメールアドレスに、スパムメールが入り込んでいるのと同じ原理である。
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本筋に戻すと、あと2年もすれば此処もVRタイトルを扱わざるを得なくなる。(尤も2年後に当ブログが存続していない可能性があるが)PCゲームの紹介・レビューを主体としている以上、VRタイトルは”いずれ”なのである。ただし、2017年内に私が意気揚々とVRについて話すことは今のところは考えていない。VRゲームを遊ぶラビリスのように、私がこういったプレイをしているところは他人には見られたくはない。公園でVRゲームを遊ぶ人たちが見え始めたころ、私も仲間に入れさせてもらおう。世間では賑わいを見せるVR関連であるが、此処で導入するのは遅くなりそうだ。